なぜ中国で配膳ロボットが普及したのか?
配膳ロボットなどのサービスロボット市場は、中国が世界を牽引していると言っても過言ではありません。ここでは中国で普及している配膳ロボットの状況や、世界に先駆けて普及が進んだ理由、ロボットが調理・配膳まで行う全自動レストランについてまとめました。
配膳ロボットの中国普及率がすごい!
5000台以上が活躍中
配膳ロボットは、中国で既にかなり高い普及率を誇っていることをご存じでしょうか。
中国では2017年に無人店舗のブームが起こりました。当時は見世物的な扱いとなっていて実用性には乏しく、翌年2018年にはかなりの店舗が閉店しています。それでも技術の研究は続き、2019年には中国でのサービスロボットの成長率は33.33%、世界市場に占める割合も23%となっています。配膳ロボットを含むサービスロボット市場は、中国が牽引していると言っても過言ではありません。世界的にコロナが流行していることも、その成長を後押ししています。
中でも「KEENON ROBOTICS(擎朗智能科技)」という配膳ロボットの開発メーカーは、「中国飲食企業100強」のうち65%をカバーしているといいます。中国で人気の火鍋専門店「海底撈(Haidilao)」や杭州料理の「外婆家(Grandma’s Home)」など、多くの飲食店がKEENONの配膳ロボットを利用しており、ホールサービスを担当させています。
配膳ロボットは中国だけでも5,000台以上、世界では6,000台以上が活躍しているのです。
配膳ロボットが中国でいち早く普及した理由とは
配膳ロボットが中国で普及している理由は、主に2つあると言われています。
- 人手不足、人件費高騰
- 中国は、日本と同様に少子高齢化による労働力の減少や人件費の高騰といった悩みを抱えています。人口が多い分、その規模は日本よりも大きいと言えます。
中国政府の試算によると、2030年の労働人口は2011年と比較して1億人以上減少し、2050年にはさらに1億人減るとされています。しかし、労働者賃金の上昇率は10%前後の高い水準を維持しています。つまり、働く人は減っている一方で、人件費は高騰し続けているのです。 - 合理性を求める文化
- 中国は欧米に比べ物事を合理化することに抵抗が小さいと言われています。人ではなくロボットが運んでくる、ということへの心理的抵抗が少ない方が、配膳ロボット導入へのハードルは下がります。また日本の場合は、なるべくリスクを取らない傾向にあることが、普及が進まなかった一因ではないかと考えられます。
これらの悩みを解決するために、中国ではサービスロボットの開発にいち早く取り組み、普及を進めてきました。
中国ではロボットによる全自動レストランも登場!
上記のような問題・文化を背景に、中国では2018年11月に配膳ロボットだけではなく調理もロボットが行う「全自動レストラン」が登場しました。
中国の小売業・電子商取引大手の「京東集団(ジンドンしゅうだん)」が手掛ける「京東X未来レストラン」です。
天津に開店したこのレストランでは、テーブル上のQRコードをお客様が読み取ることで注文と決済を同時に済ませます。キッチンには管理スタッフがいますが、調理ロボットが40種類の中華料理を調理し、配膳は配膳ロボットが行います。
また2020年1月には中国の不動産開発会社「千玺集团」が広東省佛山にロボットレストラン「FOODOM天降美食王国机器人餐厅」(グルメ王国ロボットレストラン)をオープンしています。こちらは日本のニュースでも取り上げられました。
対人接触不要の全自動レストランは導入にかなりの資金を必要としますが、配膳・下げ膳などサービスの一部分を比較的安価に導入できるロボットが担う時代は、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。